To deceive oneself is very easy.
 帰りに寄り道して二時間程を立ち読みと月を眺めるだけに費やした。
 
 目の前に四つ選択肢があり、其の内の一つは五年前の僕が無理矢理造り出したレールが残っている。そして其の一つを見出した後に僕は元々造り掛けて居たレールの制作を途中放棄してしまったから、残る三つの内の一つはもう先が無い。残る二つはどれも似たり寄ったりで片方を選ぶともう片方が消える。其の一方は未だ舗装されて無い道であり、これから先僕が先に進むには必死でスコップを両手に持って土木作業をしなければならないだろう。最後の一つは獣道であり、道の脇に生えている棘の所為で歩けば歩く程痛くて仕方無い。
 僕は五年前に確かにあの道を選び取った筈なのだから、と自分に言聞かせて棘を掻き分け進み掛ける足をレール沿いの道に戻している。
 
 考えれば考える程虚しくて哀しくて堪らなくて、独りになったら最後僕は泣くに違い無いと思ったから只管他に人が居る場所ばかり選んで居座り続けたのにふと油断した瞬間に涙が毀れてしまい人に見られない様に誰も居ない場所に行き、そして更に泣く。
 此れって酷く無意味な悪循環だ。
 
 こういう僕を僕は嫌いだから忘れず記し、せめて憶えて居る内だけでも同じ事をせぬ様に心掛けよう。悩むだけじゃ何も解決し無い。全ては自業自得なんだ。