見えぬ不都合
 「見えぬ不都合、見逃して良い、か 価値の揺らぎに-6-」230107 『北海道新聞』。

 「『便利』という名の地上の都合ばかり考え、地中で起こることには無関心」(53p)。
 後に法政大学総長を務める田中優子氏は記載する。
岩波ジュニア新書『グローバリゼーションの中の江戸』(岩波書店 2012年)にある、一節。

「着物は使い尽くされて土に戻り」(52p)。
「(同)世界を巡りながら地上と地中を循環」(53p).
「陶磁器もまた世界を巡りながら、人から人へ受け渡し、最後はふるさとである土に戻る」(同)。

「漆もまた、すべて木の成分でできていますから、土に戻ります」。
 「プラスチックや原子力では、こうはいきません」

北海道内配布の紙面、年始ならではの「社説」。シリーズもその最終回。
「最終判断はAIに頼れぬ」の主題。
 むすびは、「(AIが存在しない社会は考えにくい)その過程では人間優先の価値観を大原則とすべきだ」。そう結んでいる。

 「期待高まる救いの手」の小見出しで、AIが存在しない社会は考えにくい。そのように時代観を示しているようだ。
 「負の側面無視できぬ」の小見出しから、人間が担うべきこととAIを活用することの仕分けを進め、社会全体でルールや合意の形成を図る努力」を提起しているように、読める。

 田中の論にもどると、AI、その特性。
 目に見える、すなわち<地上の都合ばかり考え>、AIのもたらす懸念される点。
 目に見ようとしない<地中で起こることには無関心>が、<まかり通る>ことにはならぬか。

 ITが発達、しかし長時間労働は解消したか。
 ITの普及、経営は人間に対する投資より、機材に寄せる投資を重視していないか。
 ITの時代、情報・金融・生活様式を一元化しすぎて寡占、独裁、他者の意見を切り捨てるに転じていないか。