「第三次ベビーブームはこなかった」「破綻した『学校と職業の接続』」 前田正子著『無子高齢化-出生数ゼロの恐怖』.
 「第三次ベビーブームはこなかった」「破綻した『学校と職業の接続』」 前田正子著『無子高齢化-出生数ゼロの恐怖』.



 江戸時代、庶民の次男、三男の結婚は困難であった.農地・山林など資産があって、分家・別家の創設が可能であればは、ある意味、特別なことであった.

 戦後、「産めや、増やせ」の時代の貧困を知る世帯は、子どもはせいぜい4-5人の世帯に.そこで、多くのヒトは考えた.「子ども一人に要する、生涯教育費はいくらになるか」.
 定期昇給を織り込んでみても世帯主一人働きならば、奨学金に依存しないで修学させることのできる子は、二人まで、かと.

 バブル崩壊期は、ここに大きな変化が生じたのだと、受け止めてきた.そこのところを、このキーワード.「破綻した『学校と職業の接続』」.
 「学校はでたけれど生涯雇用、定期昇給、福利施設充実の安定企業が、ない」.これは若者たちの、思い.
 思いで済むとよいのだが、その先には、非正規雇用の現実が、待ち伏せている.

 非正規雇用で、結婚はできるか.著者は次のキーワードを用意.「若者の非正規雇用が非婚化を招く」.

 非正規雇用がすすむ一方、正規雇用にも<女性労働時間の男子化、男性給与水準の女子化>も、ある.かつて、夫婦二人で子育てもできた農林漁業、小規模工場、マチ中の小売店らの所得.
 非正規雇用のもとでは男性も女性も、出産の経費はもとより、出産・育児の休暇、その後に必要な子育て経費の展望はたたない.
 彼&彼女たちは、<自分の口はぬぐえ、車とスマホは持てても、病気・出産・子育ての経費は老齢の家族の年金依存>.そうは、なっていまいか.

 政権担当者にお届け.「保育園だけが子どもの問題ではない」の語句も. 
 著者の示す多くのキーワードから、むすびに用意は「第三次ベビーブームはこなかった」.
 意味するところは、<団塊世代=第一次のジュニア世代=第二次に非婚化がすすんでいる>.

 少子高齢化のさきにあるという<無子高齢化>.人為の知恵の結果と言うより政策ミス、それ以上にまっとうな政策展望を<我が国はもっていない>.そこが主張点と、みたが(岩波書店 2019年11月).