小野善康著『成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか』
小野善康著『成熟社会の経済学――長期不況をどう克服するか』。「成熟社会」ということが、言われている。著者は1980年代から90年代を境に発展途上社会から成熟社会に「大きな変貌」(はじめに i)を遂げたとし、成熟社会を「いますぐ欲しいような物はほとんどすべてそろっています」と整理し、「(需要不足が原因)不況を長期的な現象として捉える必要がある」する。

 各章で「発展途上社会から成熟社会」、「財政破綻の常識を覆す」、「金融政策の意義と限界」、「成熟社会の危機にどう対応するか」、「国際化する経済」の順で、解決を生産の効率・安価・輸出増ではなく、需要を変えることに求めている。

 国際競争力を高め、国外市場を確保し、外国資産(外貨)を保有する努力は円高を結果し、自分で自分の首を絞めるとも述べる。
 環境とエネルギー分野で新規の投資と雇用の確保が可能で(195p)、国民は金を貯めるまえに「国内の消費者に夢や楽しみを与え快適な生活をもたらす商品やサービスを開発して、内需を刺激するしかありません」(193p)とする。

 若者の就職困難、中年の離職を「自己責任」とするのではないとする点は理解する。
 日本人の貯蓄志向をかえ、内需拡大をすすめているが、高齢者の老後生活不安は小さくない、はず。
 「現役時代に働いて退職したすべての人に、一定水準の老後生活を保障すること」は、重要な指摘。

 しかし、そこに至る図式と展望を、もう少し踏み込んでほしい。
 確かに≪高齢者のこれから≫は新規雇用可能な領域ではあるが、高齢者に対するサービスも、従事するサービス提供者への処遇も、いささか≪低レベルではないか≫と、思う点が多いからである。(岩波新書 2012年)

編集 ペン : 高齢者と呼ばれる方が一番元気・・これは発展途上では考えられていなかったのかも知れません。物から心への転換が必要なのかも~♪生涯を通して生きがいが持てる人生でありたい^^