森健著「東京スカイツリー 3.11の奇跡」
 森健著「東京スカイツリー 3.11の奇跡」。世界最高634メートルをめざし建設した東京スカイツリーの開業も5月22日に予定されているのだそうである。

 すぐる3.11の大地震のとき、震源地は東北なれども首都圏も震度5が記録された。そのとき、現場では?。確かに存在した関心事ながら、そこに地震の揺れが到達していたことなど、「念頭になかった」ということが、本当かもしれない。事実、小生は本書を読むまで、思いいたらなかった。

 工程からいうと大地震は皮肉なことに、「最終段階にして最重要、最難関の工程に差し掛かっていた。(略)『あと少しだ』。(略)その時だった。『地震か』『来るぞ』」(328p)。

 最悪、もっとも避けたい、あってはならないタイミングで、1000年に一度の大地震に遭遇したと言うから、そういうことかと、感慨をもって考えざるをえない。

 技術の粋。計算しつくして施工した工事の途中で、想定した強度が実際に発生した揺れで「確認」できたということだから、これまたたいへん。こちらは未曽有の実験ということかも、知れない。

 最後の最後。塔の先端の中心を6センチ以内の誤差におさめたい修正作業の最終段階で、実際に生じていた誤差は2センチで、なんなく修正して作業を完了。

 その場面、偶然に昨夜のNHKTVで紹介されていた。技術者は安堵の表情で「三々七拍子」。
 開業を前にということもあろうが、相前後して、技術の蓄積の紹介を読み、そして眺めた。(『文藝春秋』 2012年6月号)。