中村清次著『シルクロード10の謎―文明交流の地をあるくー』
中村清次著『シルクロード10の謎―文明交流の地をあるくー』。シルクロード。NHKが1980年に放送で取り上げてからでも四半世紀。
 この間にシルクロード研究は、「調査・研究の進化」させ、「優秀な研究者たちを輩出」(12p)したのだという。
 その理由はなにか。コルラというマチが、緑地帯に平たく広がっていた「豊かな緑地」(9p)が「小上海」(10p)に転じた「開発」が、皮肉なことに学問の発展をうながしたのだと、する。

 地球が大航海時代をむかえたとき、「陸のシルクロード」は終焉を迎えたことになるのだという。そうかも知れない。「陸のシルクロード」が終わって、「海のシルクロード」の時代が始まったとする。

 巨大国家・中国が、内にウィグル新疆地区の民族問題を抱えていることは知られている。
 一本の鉄道が突貫工事で貫通して、石油資源が開発され、「秘境」といわれたシルクロードに観光客が押しかける。
 
 開発と観光で投資が重ねられ、格差が広がったとも報じられている。 開発にともなう学術調査で、科学は永年にわたるヴェールを解きほぐしたことで、新たなる知見と人類の躍動があきらかになったことは良いが、情報としては残っても物象としては失われたものがあるとすると、「良かったのか?」と。

 本書に示される努力によって映像化された点は貴重で、努力なくして映像保存もおぼつかないが、考えさせられる点も多い。(日本放送出版協会 2012年)。

編集 freehand2007 : 『シルクロード10の謎』では、「秘境」の意味を「遠隔性」に加えて「絶壁の危険」で維持されていると書いていたと思います。でも、中国の画像をみていると、「下は大河の流れ」、岩肌に「造作物の道」があり、「お金になるなら難工事も辞せず」を実感したことがあります。人海戦術の背景に犠牲もと、思ったものでした。書き込み、誠にありがとうございます。
編集 ペン : 海まで遠い国々ではまず陸地での移動が発達したのですね。確かに自分の足で動けばよいのですから・・。秘境と言う言葉が冠された時からもう人々が押し寄せてしまうのだと思いますがいかがでしょうか?