金子勝著『セーフティーネットの政治経済学』
金子勝著『セーフティーネットの政治経済学』。著者は政治・経済の機能や役割を、「将来不安を取り除く」ことに求めているかのように、見える。
 そこで、書名に採用した「セーフティーネット」を「再構築することによって」「(将来不安を取り除く)制度改革」(44p)が、必要だと主張する。世に「閉そく感」ということを、言うではないか。そこのところに、経済学の立場で展望を開こうとしている、ようだ。

 「市場競争そのものは、セーフティーネットとそれに連結する制度やルールと切り離して存在しているのではない」(70p)とも、書く。
 市場原理や自由化、規制緩和、自己責任(新古典経済学派と括るらしい)を求めう学者、政治家、官僚が、他方で金融機関救済のために公的資金注入に対して、口をつぐむのはおかしいとも、言う。

 1999年の著作。その後の、あるいは直近の政治・経済状況に寄せる、最近の著者の見解を読んでみたい。 (ちくま新書 1999年)