野村春松談・蟹江節子著『四万十 川がたり』
高知県を流れる四万十川。「四万」に「十」の川を集めた河川ながら、地元では古来の「渡川」本来の河名とする。
 その流域に生きる野村春松翁を通じて、四万十川の「川の端の暮らし」「川の力、山の力」「川の漁」「川の旅人たち」「大事なものはニキにある」と、各章を展開。

 川に人工的な造作を行うことのむなしさを指摘する。人工的な造作は川を破壊するとさえ主張する。
川がはぐくむ天然アユに対して、養殖アユのひよわさを示す。
天然アユのうまさについて、二つの見方。ひとつは漁具に立ち向かってくる力強さ。この子孫を多く残したいから漁獲しないと述べる。他方で、天然アユの≪うまさ≫について、藻を食べたあとで排せつした時刻をみはからって漁獲するという。身に栄養、腸に糞がなくて丸ごと食べられる、とする。
あとは、食するの者の味覚。舌のかみわける力ということか。

 「人と自然はながくむきあい、その変化を観察してきた」が、野村翁の主張点、か。川は古来、人の交流路、生物を養育する場であった。
地名を考える行動を起こす時、「川の力、山の力」を示している人の営みに、深く注目するべきではないか。本書を手にして、思ったことであった。