梅雨の雲
深夜未明、ぽつぽつぽつりと雨の音、
大きな船の汽笛が、ボーッと聞こえていた。

雨音は、本降りとなり、今日は雨だわ!と思いながら眠った。
今朝は、梅雨寒が戻り、音も無く静かな雨の朝となる。

冷んやりした風が、小窓をカタカタ叩き、
外に出れば、山々の周りに白い雲が浮かんでいた。

湿った空気が冷やされて、水蒸気を含みきれなくなった時、
余分な水分が水滴、氷となり、空に浮かんだものが雲だと思う。

雲は、時には、青空に真っ白く浮かび、綿の様にふんわりと美しい。
雨が降るときの雲は、灰色と化し、人の心まで暗くしてしまう。

夕暮れになれば、雨が止んだ時を見計らい、川沿いを散歩してきた。
青い藻が長く連なり、その下を棒でつつくとドジョウが隠れて見える。

桜並木の樹木の葉も、濃緑の硬い葉を見れば虫食いの後がある。
雨上がりの山々は、濃ブルーとなり、雲ひとつ浮かんではいない

青々とした田園の散歩道には、犬を連れて歩く人達で賑わい、
知人の御夫婦に気付き、笑顔で挨拶をする。

家路に急ぐ途中、東の空に母の笑顔に似た雲を見た時、東京を思い出す。
あの人達の顔を思い出し、涙が一滴、こぼれて落ちた。