考即悲
 考えれば考えるほど悲しくなる。
 帰りにバスターミナルで頭禿げ掛けたおっさんにナンパされました。

 四時丁度のバスに乗る前に本屋に寄って五、六冊買ったものを取り出してバスが来るのを待ちながら立って読んでいたのですよ。
 僕が居た壁の近くに人が来たと思ったら小さい声で「可愛いね。」と囁かれたのです。
 恐る恐る顔を上げたら其のおっさんでした。見なかった事にして視線を読んでいた本に戻したのですが…。
 其の後、延々とおっさんに語り掛けられました(T▽T)

 『如何して僕が哲学書片手にバスターミナルなんかで中年オヤジに「もし彼氏とか居ないんだったら良かったら付き合ってくれませんか。」とか言われなあかんのや!
 頼むから其れ以上照れながら暈けた科白口に出さんといて!』
 と、僕は心の中で叫んでいたのですが…当然おっさんは気付きもせずにずっと照れ笑い浮かべながら語ってました。
(心の叫びが似非関西弁なのは無視しておいて下さい。元々岐阜弁は似非関西弁みたいに聞えますし、僕は母の影響で少々キレてると似非関西弁になりますので。)

 今日は睡眠不足だし髪は結んでいなくてボサボサの侭垂らしてるしいつもの如くすっぴんでしたので…如何考えても今日の僕は可愛く無かったです。てか、元々僕は自分を可愛いとは思え無い。
 「綺麗だね。」「もてるでしょう?」と世辞言われるのは別にいい。どうでもいい。唯、対処に困った。
 仕方なく引き攣った表情の侭「いや、はぁ、ハハハハハ。」と否定も肯定もせずに笑っておきました。

 以前中年男性に同様に声を掛けられた時に偶々別件でむかついていたのも相俟って、「目腐ってませんか? 顔を洗い直してきた方が良いですよ。 頭は正常に働いていますか?」と笑顔浮かべて言った事があります…。
 言って後悔しました、其の後数時間付き纏われたので。
 其れ以来、似たような状態に陥った時は出来るだけ僕からは何も言わずに回避する事にしてます。余分な事は言うべきじゃない。

 今回は五分程語り掛けられていたら、僕が乗るバスが来たのでおっさんから逃れられました。
 てかね…あのおっさんが如何して僕に声かけて来たのか考えていたら自分が悲しくなってきました。
 そんな頭禿げ掛けたおっさんにでも簡単に落せそうに見えたのかなぁ とか、そんなに彼氏居なさそうに見えるのか とか、おっさんに声掛けられるくらい老けて見えたのか とか、全然もてなさそうで冗談のつもりで声掛けたのかも とか…とかとかとかとか…etc。
 考えると矢張り悲しい。余りに自分が悲しくなってくるので途中で思考放棄しました。

 如何して僕は中年オヤジにばかり声掛けられるのだろうか…あ゛…是も考えると悲しい。