妻の言い分
妻の言い分聞く夫 農業経営の継承、新時代210323。



 琵琶湖に近い滋賀県東近江市の池田牧場。
 そこでは一人の女性を中心に家族経営で6次産業化を展開している。
 生乳生産者農家の主婦が、生産調整で搾乳した生乳を廃棄する。その現実にハッとする。
 「ただ、搾るのみでは、ダメだ」。

 自分たちが搾った乳。自分の手で加工し、消費者に届けたい。
 友人に「美味しいワッ!!」。
 そう言わしめた生乳を自分で活かす。結果として和洋中折衷の「乳製加工食品」を作り、販売することになった。

 時期は「子育て」に一区切りついた時。夫は妻の言い分を理解し、協力してくれた。その夫の「協力スタイル」。
 農協幹部にわたりをつけ、「生産物の一括買取」以外の自家製加工に了解をえた。
 信用金庫との交渉も引き受け、融資の道を開いた。そだればかりでない。信用金庫はその可能性を認め、国民金融公庫の融資にも拡大してくれた。
 保健所に一度、提出した書面。理解がえられずつき替えされた書類を、夫はネバリ強く交渉し、製造品販売の提供業者としての許可。それを獲得できた。

 この間、彼女はもと師事していた料理教室開設者のもとに走る。
 「先生、乳製品加工の指導を、お願い」。料理教室は頑なであった。
 「週3回の教室があるし、牛乳食品の加工など、手がけた経験がない」。
 頼み込んだすえの結論は「(先生談)2年間、講座を休む、一緒に取り組もう」。

 新製品の「乳製加工食品」。初年度の売り上げは3700万円。
 創業者も、元はといえば農家の娘さん。地元の商業高校に進学した。
 信用金庫職員となり、そこで典型的な男性サラリーマンの生き方を目にした。
 自分は、一次産業の「モノつくり」する人と、「生きる」。

 経営を男親から引き継ぐ農業経営の息子。親の言い分を聞くか、嫁の言い分を聞くのか。
 「今は、嫁の言い分を聞く」
 「嫁はそれまでの育ちと人脈をいかして、生産から消費までの6次産業を展開」。
 そのモデルのような話。
 

 日曜日の午後。放送大学の番組表をみながらチャンネルをあわせた。
 BSラジオ放送。科目は「地域の産業発展と主体形成」の8回目。
 調べて「放送大学 大学院課程 社会経営科学プログラム」。
 なかで、「第8回 女性起業の展開と役割(ケーススタディ)」の二話中の一話。 
【キーワード】 女性担い手、地域活性化、6次産業化。
執筆担当講師名:中村 貴子(京都府立大学大学院准教授)。