キレのある難度の高い舞で怨念払うクライマックス 松竹大歌舞伎『色彩間苅豆-かさね-』
キレのある難度の高い舞で怨念払うクライマックス 松竹大歌舞伎『色彩間苅豆-かさね-』

『色彩間苅豆』は、「いろもようちょっとかりまめ」と読むそうで。「間」を「ちょっと」と仮名ふるは、「作者・鶴屋南北の洒落気(しゃれけ)」とされている。
 「-かさね-」は「累」の字をあて、奥女中の名。



 浪人・与右衛門(よえもん)と奥女中・かさねと、恋仲となるも流れついたドクロのあった鎌をぬいたところで事情は一変。
 浪人・与右衛門は奥女中と出会う前にもその実母と恋仲になり、母の夫を<めった切り>に。流れついたドクロは、「(メッタ切りされた)助の変わり果てた姿」。

 斬りつけられた奥女中母の夫の怨念 女中にも間男にも。清元の謡いにのって展開する舞台は大きく転じ、助の怨念が女中にも間男にも。
 とりつかれた娘のかさねの左眼はつぶれ、左足は不自由に。他方、間男も助の怨念から逃れようとかさねに切りかかり、色模様は終わって、壮絶な殺し場にする展開。

 「男と女の心のすれ違いに深い因果が絡む舞踊劇」とされる終章は、それぞれ「助の怨念」のとりつきを逃れようとする舞でしめくくる。
 舞は女も男も難度が高く、キレのある舞。逃げまどいつつ追いかけてはなれぬ<もだえ>にとりつかれ、幕となる名場面。

 松本白鴎と松本幸四郎の襲名興行。
昨年の中村芝翫襲名興行が<歌舞伎のおもしろさ、たのしさ>をおもわせる<啓発普及>。今期はいっそうの深まり、<歌舞伎の片鱗>を示す位置にあったか、か。奥行きの入口を体感させてもらった。