高い能力の人材ー発掘、確保、育成、島田昌和著『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』。
高い能力の人材ー発掘、確保、育成、島田昌和著『渋沢栄一 社会企業家の先駆者』。

 短いセンテンスで本書の主張点をまとめ上げることは難しいが、212ページに記載の3点が、一定の意味をもつのかと低次させてもらうことにする。

 1)「同時並行で多数の会社を運営していくためには、さまざまな経営者の協力が必要であった」。
 2)(日清・日露戦争前後に)「日本経済の体質強化のために経済政策に対する独自の発言と行動」を見せる。
 3)「日本という国家の構成員のあり方にも積極的に関わった」としたうえでm「高い能力を人材が産業界に進むような教育機関を自らの行動をもって支援」



 1)は人材の発掘。ここでは「専門経営的人材」を肉親外に求め、身内は傘下企業の管理に位置。2)で渋沢の意には反して「民」の政府頼み、「官」の一元管理が強まる方向とする。
​ 3)では「人々が社会のマイナスと考えがちなハンディキャップをもった人々を社会の一員とし、目をそむけることなく向き合った」と評価する。​

 ヒトによっては東京高商、つまり一橋大学の発足につながる見識に注目する読者もおいでになる。
 他方で京華商業学校。その校長に前田正名を委嘱する事実(171p)に、注目する。「1899年の実業学校令が発布されたので、1901年に京華商業学校を開校した」「初代校長には元農商務省次官で地方改良運動に尽力したことで知られる前田正名(1850ー1921年 亡くなるまで名誉校長)を招聘した」とする。

 また、「王子製紙に対しては藤山雷太を送り込んだので、渋沢と専務取締役の大川平三郎は1898年に同社を辞任している」「中上川は三井内ですっきゃくる1901年まで、この軋轢が続いた」(116p)とも(岩波新書 2011年)。