多様性尊重のうえに自己確立 磯田道史著『司馬遼太郎スペシャル』


多様性尊重のうえに自己確立 磯田道史著『司馬遼太郎スペシャル』.
 「100分 de 名著」番組テキストが、「100分 de 名人」に転じたかの、感.
 没後20年を期して、一作品を論ずる内容が作家一人(いちにん)を論ずる視野を示す.

戦国、維新、戦中・戦後.
 4作品を軸にその関連深い作品も、豊富にとりあげる.「なぜ日本は失敗したのか」「なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか」.
 著者は、司馬の戦争体験に思い馳せつつ、そこを思いめぐらす.

 『国盗り物語』は、「日本陸軍の『先祖』が濃尾平野から生まれてくる過程」(31p)

 『花神』は、「陸軍が誕生時にもっていたはずの合理性はどこへ行ったのだ」(42p)

 『「明治」という国家』は、「(薩長土肥の)この多様さは、明治初期国家が江戸日本からひきついだ最大の財産」(59ー60p)

 『この国のかたち』は、「(敗戦までの十数年)日本史のなかでもとくに非連続の世界」「明治憲法下の法体制が、不覚にも孕んでしまった『異胎」「鬼胎」=自分のこどもではあるが親に似ていない」(74&75p)

司馬のリーダー像
 「国を誤らせない、集団を謝らせない、個人を不幸にしない」(46p).
 一方で対極にあるのは、「仲間だけでしか通用しない異常な行動を平気でとってしまうこと」(47p).
ここを読んで、頭の痛いのは国民のほう、か?.

 筆者はまた、最も有用な財産となったのは「江戸の多様性であると司馬さんは言います」(50p)と、書く.
本書表紙の副題には、「自己を確立して、他人をいたわるーそういう人になってほしい」、と.

 あわせて.「多様性尊重のうえに自己確立」ということなのかと、うけとめたのである、が.(日本放送出版協会 2016年).