吉川洋著『高度成長 日本を変えた6000日』
 吉川洋著『高度成長 日本を変えた6000日』 本書は1997年に書かれた.おおむね高度成長がまがりかどに来て20年.
 高度経済成長を数値でみると「いかがなものであったか」、また「成長がもった意味」を論じ「成長」とするロジックを問いなおしてみている.

 166pにある、岸総理への評は興味深い.
 「岸は徹頭徹尾「戦前」志向の政治家だった.岸にとって敗戦国日本の再建とは、とりもなおさず戦前の日本の再建にほかならなかった.(略)「岸にとって最大の課題は、再軍備を準備しながら日米安保条約を改正することだった」.
 岸信介氏は、現政権の手本と自ら述べている.本書発刊後、15年以上経ているが、ここにある整理は目にはいっていないのであろう.それだけに、「戦後レジュームの脱却」なる言辞が、なにをめざすのかも示唆してくれる.

 本書を書くについて、著者は二つの「思った」を述べる.
 1)「経済学が成長の問題を分析するときには、かぎりなく歴史学に近づかなければならい」(ヒックス)を「いつかそうしたことを実践してみたいのだと私も思っていた」.
 2)自身の「子供」として走り抜けた時代を、「自分なりのやり方で振り返る時間をもってみたいと思った」.(234p).

 「成長」の枠組みとその持つ意味、「成長」なる語のもたらした益蓄積の方向を考えるに、有意味性が高いのだと、考えた.(読売新聞社 1997年)

編集 ペン : 温故知新でしょうか?日本の過去を全否定したところから出発した維新に少々疑問を感じているペンです^^