誓紙 無名法度の間 藤井譲治
  誓紙 無名法度の間 藤井譲治。江戸幕府の支配構造を法制度のうえから段階にわけると、四段階になるという。

  将軍に誓紙を提出する初期段階。法度とよばれる武家の分国法のシステムにのっとる第二段階。「禁中並公家諸法度」や、「武家諸法度」が知られる。将軍の大名統制、二つ目の段階。幕藩体制が確立するも、大名統制のレベルにあって領国内の庶民支配には及ばない。

  第三段階は老中奉書という連署で宛先表示のある、キリシタン取り締まりや永代土地売買禁止令。このあたりになると、大名家臣団の忠誠から庶民生活にも権力の判断が及ぶ。

 第四段階は「無記の法度」。発信者も受信者も記名がない。御祐筆の条文記載の書面のみで、発給者は将軍家、受信者は受け取る大名家。

 誓紙はうけとるほうの「応諾」の意思表示をすくなくも必要とするが、「無記の法度」は権力側の一方的強要と、「力関係」が言外に表現されている、とする。

 (藤井譲治著「『法度』の支配」 『近世の日本 支配のしくみ』 中央公論社 1991年所収)。