安渓 遊地 安渓 貴子著『大学生とマチに出よう―地域共生授業をつくる』
 安渓 遊地 安渓 貴子著『大学生とマチに出よう―地域共生授業をつくる』

 今、高等教育機関は研究、教育の支援にくわえて「地域貢献」ということが、仕事の一部になっていると指摘し、「地方の小規模な大学の教育とはどういう仕事か」と、出版の意図・読者の対象を明記する(「はじめに」)。

 「地域共生授業で地域と大学の教育力を統合する」に「地域は教科書、住民は教師」と整理し、地域リーダーを講師に、その群れが「ふるさと山口発見」と銘うった<トランポリンの網>を支えて、学生を跳躍・躍動させるイラストで説明する。
 また、「水(人材)の循環と水圧(教育力)の関係」は<噴水>で図化され、噴水の量と水を上にあげる水圧に「地域課題解決の実践能力」と掲げて、人材育成のために地域、学部、大学院がかかわる理念と実践力のありようを図式化する(20p)。理論を明解に示すための工夫には、なみなみならぬものがある。

 「学生の社会認識と問題解決能力を養成するワークショップ型の演習」を掲げ、山口県の公立大学で精力的に取り組む(徳地 法華寺 40p)。
 地域の自然観察の方法は、「キャンパスから出る」が方法論としても有効のように見受けた。「その草になってみて」「その草の気持ちがわかるかな」の部分に、魅了された。

 高等教育機関での情熱と、地域に寄せる深い愛情と信頼にくわえて、地域の潜在能力を可視化する努力が、高い評価をうけている。(みずのわ出版 2010年)