立川柳田国男を読む会編『柳田国男の武蔵野』
 立川柳田国男を読む会編『柳田国男の武蔵野』。柳田国男に「武蔵野の昔」と題する17項目にまとめたものがあるとのことで。後藤総一郎氏が『常民大学』という講座で読み続けた本文をもとに、その参加者が世に言う武蔵野の枠組みを読みといた。
 あわせて本文を紹介し、注釈と解説もつけられている。

 「武蔵野の昔」は、全集に収録されている。そもそも大正8、9年に慶應義塾大学山岳会の年報『登高行』に「武蔵野雑話」、「続武蔵野雑話」と題して掲載したものと言う(194p)。

 市職員、主婦など7名の方が分担。
 「武蔵野の枠組み」という点では、「武蔵野概説」「柳田国男の武蔵野観」「武蔵野の水」「武蔵野の道」「砂川村の開発と信仰の諸相」「武蔵野」「柳田国男の『民俗学』と武蔵野」という形であきらかに、される。
 うち「武蔵野」は、副題が「郷土研究をめぐる葛藤」とあり、郷土研究の拠点である「武蔵野会」を軸に、柳田と人類学者・鳥居龍造などとの学問上の気風の違いと論争を示す。

 後藤氏の取り組みが「テキストの注釈研究を積極的に進め」る点にあって、遠野常民大学、遠州常民文化談話会でも、幅広く取り組まれたとある。
 武蔵野を、国木田独歩とは異なる視点と記述でとらえ、近代において著しく変じた地域にその骨格と肉づきの過程を提示しようとした柳田の努力は、現代の市民によって今の市民にも正確な理解の手掛かりをあたえるものとして受け継がれた。本書の意義は、そこにありそうである。(三交社 2003年)。