漢籍の力
 漢籍の力。前田正名、『高橋是清自伝』を読んだという人が訪問してくださって、ひとしきり前田正名の話になった。

 いろいろ話がはずんだのであるが、期せずして前田にしても是清にしても、周囲に英語教育をうけたものが微少であるにもかかわらず、「いかにして国際社会で通じる語学を身につけることができたか」という点になった。

 訪問してくださった方は、英語教育、とりわけ海外で華々しい活動歴をもつ日本人の行動記録に読んでいる。
 その見識からすると、外国語に強かった日本人に重なるものとして「幼少の時代から読んでいる漢籍の読解力にある」と規定された。

 いっぽうで漢籍の力が、抽象的な概念を具象的なものにイメージする能力もまた、高かったのだとする。

 そのうえで、彼ら(前田・高橋)の英語は、書く、読むことにはじまり、すすんで会話をネイティブな人物との交流のうえで鍛えているので、欧米のインテリとの交渉にも十分に対応できたのだとする。

 前田は万国博事務官長でパリに出向いて国威昂揚に務めたし、是清は外国債調達で国外のバンカーらと交渉し、目的を達した。

 二人について見上げたものと驚嘆する人が多いが、交渉手段の語学も、話をまとめる哲学も、豊富な漢籍の読解にあったのかも。

 このやりとり。ビジネス教育のうえでも、有意なことと考えた。