益川敏英著「湯川秀樹ー物理の荒野のドリーマーー」。
 益川敏英著「湯川秀樹ー物理の荒野のドリーマーー」。本邦で最初のノーベル賞物理学賞を受賞した湯川秀樹について、湯川の孫弟子にあたるとする、これまたノーベル賞受賞者が論じる。

 孫弟子ならではの内側からみた湯川像を提示する。中間子論理解のために、「相対性理論」と「量子論」の理解をうながすところから始まる(100p)。
核力というのは原子核内の核子のところでは強く働くが、外を飛んでいる電子のあたりには及んでいない。であるとすれば、核力の届く距離は非常に短いわけで、つまり原子核の直系の距離を超えると力が弱くなり、まもなくゼロになる、そんな粒子だと考えられる」(101p)。結論は「質量は電子の約200倍で、陽子の約十分の一とわかった」(同)。これが「湯川中間子」。要するに、チンプンカンプンではあるが。
 
 湯川は勤務先の大阪大学で論文提出の催促をうけながら、そこでひらめいていた「中間子理論」をまとめる(104p)。
 ところが「ちょっとしたマチガイがある」と、益川は指摘する。補正は、3年後に益川の恩師・坂田昌一教授との研究でおこなわれる。

 湯川は言ったとされる。「自分らしくありつづけること。それは、果敢でもあり、孤独でもあり、夢みるようでもある」と。

 NHKテレビテキスト。ほかに、大崎善生著「升田幸三 伝説の棋士」所収。(2011年2月 日本放送出版協会)。