小曽戸 洋著『漢方なるほど物語』。
小曽戸 洋著『漢方なるほど物語』。漢方医学の意義と可能性を紹介。

 家康の医学の知識集積からはじまり、漢方の理念が病気になってからの治療より、病気にならないための対応に重点をおく(128p)ことを解説する。

 武将の戦場でのり患は、現代の「救急医療」に相当する(104p)。
 神農祭の行事は知っていたが、薬の神様の「神農」の徳に感謝するものであること、「神農本草経」なる経典による信仰とは、あらためて知った。

 漢方医学と、西洋医学では「病気の認識(診断)の概念が違う」(138p)とする。

 日本社会で漢方に背理するときがくる。蘭方医に傾斜していく過程である(145p)。
 明代の医学書が翻訳されても、清代の医書にみるべき訳書がなくなる。
 中国での医学発展のかげりもあるが、それ以上に蘭方医への傾斜がすすみ、明治になって天皇の脚気(かっけ)治療をめぐり、その対応は大きく転換(157p)したのだという。
 なるほど。(日本放送出版協会 2007年)。