藤森 照信著『建築探偵・近代日本の洋館をさぐる』
 藤森 照信著『建築探偵・近代日本の洋館をさぐる』は、近代の資産家が利益を豪邸にかえ、威勢を示した話。

 そのようにいえば、まさにそのとおりであるが、結果として文化の洋風化を構築した時代の、12話が紹介されている。

 建主は石油王にはじまり、生糸・タバコ・義歯・北前船主・石炭・下駄・肥料・山林・大理石・ワイン・鉄道。

 現代の巨富は「六本木ヒルズ」に住まいする人もいたが、戸建てのしかも、洋風。一棟に、フランス・イギリス・ドイツの部屋が用意されるという異国同居あるが、決してアメリカは登場しない。

 北前船主の出た河野村が河野水軍と関係し、肥料王のところで前田正名にお目にかかるとは思わなかった(103p)。

 当時、地方更生運動に奔走中であった前田は、加古川の・多木久米次郎に書を贈っている。
 多木は前田の講演を聞いて熱心にメモをとり、「農業の生産性向上には、合成肥料の製造が不可欠」と教えたらしい。教えられた久米次郎は、のちに「牛馬の骨に硫酸をかければ、リン酸石灰ができることを学び」、明治18年に工業化に乗り出すのだそうだ。
 
 記録しておこう。(NHK人間大学テキスト日本放送出版協会 / 単行本 / 1998)