円満宇二郎『戦後日本 漢字事件簿』。
 円満宇二郎『戦後日本 漢字事件簿』。NHK教育テレビの講座テキスト。

 戦後、学ぶべき漢字の字数に制限が加えられた。教育漢字、当用漢字。

 多くの漢字をマスターしないと、民主主義の能率があがらない。儒教や戦前のファッシズムから、解放されるためにも、それは文字のうえでも、体制変換をはからなくてはと、憲法改正と漢字制限をほぼ同時期に進めたところが、おもしろい。

 漢字制限は民主主義をすすめるために必要であったが、他方で《人間の主体性、同一性の障害になった》と、する。
 ご存知、人名漢字の制限である。「当用漢字になはいが、選んだ字のような子になって」と、願いをこめて命名した字が、役場でホロロに不受理となる。

 民主主義のために制限したら、こんどは個人の願いに制限をくわえるようになったと、する。

 訴訟に発展した人名と漢字。
 字は空気のようでありながら、壁もあるという話。
 一読あって、シカルベシ。