門田隆将著『ヴィクトル・スタルヒン』
 門田隆将著『ヴィクトル・スタルヒン』。「野球がパスポートだった」のサブタイトルをもつ。

 東京読売巨人軍のエース。草創期の日本プロ野球界で、年間42勝の最多勝記録を残し、生涯勝利数でも300勝を達成した大投手。

 ロシア革命後に旭川市に亡命し、旧制旭川中学学校を卒業して、プロ野球界で活躍した。
 ここまでは承知していたが、無国籍であったーと、いう。

 チームあげて300勝達成を実現した晩年、本人の意思に反して現役続行の希望はかなわなかった。古巣・巨人への復帰、指導者としての道も実現しなかった。

 実力にもかかわらず、迫害におびえ、ひるむことなく投げつづけ、勝ち続けた。
 しかし、異邦人として恵まれることは少なく、辛うじて旭川市の球場にその名を残す。
 「スタルヒン球場」。ほぼ年に一度、巨人軍の公式戦がおこなわれることがある。

 著者は、『甲子園への遺言』がNHKでドラマ化された。
 季節は人事異動の時期。不遇と思われる評価結果と感じているサラリーマンには、明日をおもわせてくれるのかも知れない。
 NHK教育、「知る楽」のテキストの一冊。