飯盛女
 宇佐美ミサ子著「飯盛女」。江戸時代の宿場街で、宿泊者に給仕する役の女性が、そのまま性を売る存在、それを強要されていたことは、知られている。

 場所は小田原近郊。東海道の宿場街にして、城下町でもある小田原界わい、その宿場にあつめられる「飯盛女」の存在形態を提示する。

 ついで、「人主」と呼ばれる親や身内から、宿主に娘が渡され、身代金が払われた折の、「請け書」を検討する。
 娘が逃散したときの仕置き、病気の扱い、そして死にいたらば、その土地の仕来りにそって埋めて良いと、取り決めてある。

 最後は、その飯盛女性たちの暮らし。引き取られて、人をとりもどす女性もいるが、異郷で土に返る人も少なくない。
 15歳未満で宿主に渡され、20代後半で役目を終える。代金は3両とも5両とも。時価にして30万円なり50万円ということか。

 最近、娘に売春を強要した母の訴訟で論告求刑。「娘を収入源にして」。人権を弄するものとして裁かれている。
 現代が人権を認めるのはもちろんながら、体を売ることが生きるツテと考える階層が生まれない保障も少ないようだ。(林玲子編『女性の近世』 日本の近世15 中央公論社 1998年)