伝統の秘密(下)
 旧古川町。岐阜県飛騨市古川町に200年の伝統をもつという「三寺まいり」。

 番組では、あと二つ。
 若い娘さんたちが母、祖母たちが愛用した和服を着用して参詣しようと申しあわせる。
 高齢者施設では、寺に参詣できなかった高齢者のために、奉納した大ローソクをホールに持ち込んで施設収容者に開陳する。お年寄りたちは、立派なローソクの出来栄えに、手をあわせ、涙する。

 1月15日の夜に行われるこの行事。野麦峠を越えて織物工として働いて女性たちが着飾って参詣し、その姿をみて嫁選びが行われてきたのだという。
 観光HPには、つぎの歌が添えられている。「嫁を見立ての三寺まいり まげを結わせて礼参り」。

 出会いの場なのだ。伝統はなかなか、消えないはず。涙していた老女は、その昔、あの夜に選んだご亭主を思い、手をあわせたものか。
 
 世の中の変化は早い。早いけれども、変化に翻弄されない伝統と意味。地域のなかでシステム化され、そこに参加していることが信頼を高める。そんな場面を垣間見た。