海辺のお墓



気温が少し下がったとはいえ朝から陽光がまぶしく、
可燃ごみを出した時、サングラスに大きなつばの帽子をかぶっていた。

サングラスは余り好きではなく昔からの悪印象が未だ心に残り、
滅多にかけることはない。

あれほど待ちわびた住職さん、若い方が来て3分位拝んだだけで
冷茶を飲んで頂き結構高いお布施を受け取って頂いた。

昨日は用事が出来て外出していた為、
盆送りの今日になってお墓参りをして来た。

3日前に活けたお花は既に枯れている事は分かっていたので、
少し質素な菊花と根付き香花を花瓶に活けてお線香をあげた。

新しい湧水を花瓶にいっぱい入れ石塔にお水をかけて
天国の3人にしばし語りかけた。

お爺ちゃん、お婆ちゃん、奥様、喉が渇いたでしょう。
中々来られなくてごめんなさいね。
三人で仲良くしていますか。

私は小さな声で天国の三人に問いかけた。
するとお爺ちゃんの形をした雲が大きな口を開けて豪快に笑った。

ここは家同士の争いも何もなくお酒も飲み放題だ!
お爺ちゃんに代って入道雲がそう答えたような気がする。

むくむくと空高くわき上がるさまは大男のお爺ちゃんにそっくりね。
通知表は全部甲だったと自負して生前はお仕事にパソコンを使っていた。

一所懸命に働いて3人の子供を大学に入れ、
倒れた時に病院へ付き添いに行った時汗の匂いがしていたわ。

さようなら、また来ますと心のなかで呟いてお墓を後にする。

お墓の下には広い海が広がりざざっと波の音が聞こえる。
砂浜を素足で歩きたかったが我が家に帰らなければならない。

旧盆も終わりになるのを知っているかのように、
蜻蛉がすいっと私の目の前を飛んでいく。

県内は毎日のようにどこかで花火大会が開催され、
夜空を突き破るほど大きな音が聞こえている。