桃の花
あれは忘れもしない桃の節句が来る前日のこと。
母にお小遣いを送る為に郵便局に行き2万円を送った。

私は早く送った方が良いか迷った末に速達で送った処、
それを受け取った母が危篤状態だった事も知らなかった。

叔母が「××ちゃんからお小遣いが届いたわ。」母の胸に
渡した時、うっすらと涙を浮かべて喜んでいたらしい。

元々糖尿をもっていた母は風邪をひいて僅か5日目に息を引き取り、
私を早く呼びたくても呼べない理由が有ったとしても、
周りの人がもっと早く知らせて欲しかった。

亡き母は、私の人生を壊した事をずっと悔やみながら
暮らしていたことは知っている。

それでも自分が亡くなる前に何故、私を呼ぶように
親戚の人達に言わなかったのか。。。

想像を絶する程忙しい生活をしていた私の事を母は分かっていて、
遠慮をしていた。
母も急変した苦しい身体で精一杯だったと思う。

それにしても、子供に最後位は会いたくない親がいるだろうか。
私に会いたくないと思っていたなら辛い。

遠縁の叔父さんが葬儀会社をやっていたので、
祭壇や花輪、お供物、葬儀料金等は安くして貰い、

全て自分の貯金から葬式代を支払い、初七日まで実家に滞在し、
親戚の人や近所の人達に食事やお礼をした。

お人よしの母が亡くなり一週間を過ぎてから、
母の優しかった時を思い出して泣いた事を覚えている。

最後まで母の傍に居てくれた父に「有難う。」お礼を言い桃のお花を渡し、
感謝の気持ちで涙がとまらなかった。