秋桜 (コスモス)
うす紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽だまりに揺れている。
この頃涙もろくなった母が庭先で咳をする。
縁側でアルバムを開いては、私の幼い日の思い出を、
何度も同じ話くりかえす、ひとり言みたいに小さな声で、
こんな小春日和の穏やかな日は、あなたの優しさがしみてくる。
明日嫁ぐ私に苦労はしても、
笑い話に時が変えるよ、心配いらないと笑った。

嫁ぐ前に娘が病弱な母を思う詩、秋桜は秋の歌の中で最も有名な歌。

喘息を患った母が咳をすると心配をする娘、
病気になっても子が愛しくて何度もアルバムを見る母。

晩秋(11月)の穏やかな温かい日に母と娘の心情が書かれている。
私の独身時代に姉のような友達に誘われ、玉露の里に行った時を思い出す。

林道の両側に薄紅色、濃桃色、オレンジ色、白い秋桜が咲き乱れていた。
車を止めて一輪手に取れば弱々しい花で直ぐにしおれてしまう。

秋桜の葉はふわ~と柔らかく優しい風情がある。ただ、
その枝が細くていかにも不安定。

秋桜を見たらそっと咲かせ、眺めているのがいいかも知れない。
秋桜は、主に秋に咲き、花弁の形が桜に似ている所からの和名。

私も、母の亡くなる前に幼い頃のお話を聞いてあげれば良かった。
それが出来ないほど生活に余裕がなくて走りまわっていた。

糖尿の末期になれば暇を見計らい実家に泊まり、母の介護をしたり、
母の行きたい温泉に連れて行き、好きな物を食べさせてしまった。

顔は蒼白く痩せ細り自分の命を知っていた母の言う通りにさせると、
母が喜んでくれた。あの時も秋だったと遠い昔に思いを馳せる。