春望
国破山河在  国破れて山河在り
城春草木深  城春にして草木深し
感時花灌涙  時に感じて花は涙をそそぎ、
恨別鳥驚心  判れを惜しんで鳥は心を驚かす
峰火連三月  烽火は三月に連なり
家書抵萬金  家書は万金に抵たる(あたる)
白頭掻更短  白頭の掻きて更に短く
渾欲不勝簪  すべて簪(かんざし)に勝(た)えざらんと欲す

杜甫が46才の時、安禄山の反乱が起こったすぐ後、
皇帝の朝延とへだたり、疎開先の家族ともへだてられ
ただ一人、反乱軍の陣営に拘禁されていた間の作であるという。
家族に対する細やかな愛情、それは杜甫の特徴だと思う。
晩年の放浪は、ずっと妻子を抱えての旅であったが、
家長としての細かい思いやりが何時もその詩ににじんでいる。
この詩を作った時には、家族と離れ離れになったままの時である。
国への思いは家への思いと相重なって、詩は悲痛なものになる。
やがて杜甫は軍の監禁から脱出し、妻子との再会をとげる。
その後、家族を抱えて食糧を求め、流浪の旅に出たとの事。

私は、中国の詩人に興味を持ちながら勉強したいと思うだけで
月日が経ってしまい、中々読む暇もなく今年も春が過ぎてしまう。