満開の椿
白い椿が満開に咲いている日中に、友人宅へ行き大声で笑ってきた。
美容院を経営する友人は年上の為、寂しい時は遊びに行って甘えてくる。

「突然にお邪魔―!」電話もかけずに急にお店に入った私の耳に、
近所の銀行員の奥様が、パート先の悩みをお友達に話していた会話が聞えた。

お友達はかん高い声でその奥様に激を飛ばし、励ましていた光景を見て、
この人には自分の悩みを言わないほうがいいとその時は思った。

彼女は、私の顔を見て、「何か、有ったでしょう? 顔に書いてあるわ!」
悟られてしまった。

「ここは、美容院と言うより、悩み相談所ね!元気が出るクリニック!」
私は、何時も元気が出るクリニックと呼んでいる。

手ぶらで行って、コーヒー、ピザパンをご馳走になり、悪いと思ったので
ディオールの口紅を半額で買い、午後3時過ぎに帰宅した。

彼女のお宅の裏庭に、たわわに実った蜜柑を頂き、持ち帰って来たものの、
次女は、夜勤明けで夕食時まで眠っている為、室内は静かで誰も居ない。

昨日から、晴れて風の冷たさは感じない日中から夕方になれば、
濃ブルーの山々からすうすう初冬の風が頬を通りすぎて

霜月から師走迄は、夜長で野山は枯れ野と化し、寂しい感じがする。
薄暗い玄関の外には、白、薄桃色の椿の花びらが風に吹かれ揺れている。