もやもや
 先月聞いてからもやもやしてたものを書いてみます。

 子どもの頃、近所のガキ大将にされた頼みごとを断るためにそのガキ大将に自分の秘密の場所を教えたことがあります。
 正確にはガキ大将の秘密基地を教えてもらったお礼に何かするかもっと秘匿性の高い場所を知っていたら教えろと何度も問われてつい面倒になって、でしたが。未だに覚えているので当時の自分は余程うまくそのガキ大将の要求をかわせずに困っていたのだと思います。

 ガキ大将が教えてくれた秘密基地は秘密でも何でもない通り道の脇にある場所でしたが、自分の秘密の場所はその行き辛さ故に近所の住民のほとんどが知らない秘密の場所でした。
 秘密の場所はガキ大将や自分が住む地域からほど近い山の中腹にありました。普段は乾いて疎らに雑草が生い茂る殺風景な台地でしたが、梅雨の時期や長く雨が降った後にだけ小さな池ができて百合の花が綺麗に咲き誇るところでもありました。
 毎日「あれをやれ」「これに付き合え」と言いたい放題の生意気なガキ大将が、その秘密の場所を教えた時はにっこりして感謝の言葉を言ってきたのを覚えています。そこに咲く百合の花はガキ大将の母が好む花であったとか、お母さんへのお土産に数輪摘んでいきたいだとかそんなやりとりもあったようななかったような。

 その場所は自分にとって息抜きに来る秘密の場所だったので、ガキ大将には他の人に教えないように頼み、ガキ大将はそれを了承しました。ほんの一ヶ月くらいだけ。
 気付いたらガキ大将は、ガキ大将が一人で見付けた秘密の場所としてその場所を遊び仲間に話してしまっていました。かなり行き辛い場所なので入り浸る子は少なかったものの、そこは自分にとって息抜きできる場所ではなくなりました。

 それから十何年経って、つい最近にガキ大将が多くの人にその場所を再び教えたことを知りました。
 昔子分たちとその場所に来てたことを忘れたのか、子どもの頃常に一人で過ごしていた場所として紹介していたそうな。

 それを聞いてからどうももやもやしています。
 未だに悔しいのかもしれない。