利用規約
 SNS「mixi」の規約が4月1日から改定されるのですが、新規約のうちの著作権に関する部分が問題になっていたみたいです。
 経緯はCNET Japanの記事「mixi、4月1日より利用規約を改定--日記などについて著作者人格権の行使を禁止( http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20368643,00.htm )」を読むと把握し易いです。

 実際の新規約で、問題になっていた部分は次の第18条です。


[mixi] 利用規約
mixi利用規約 平成20年4月1日 制定
http://mixi.jp/rules_sample.pl

◇◇ここから一部引用◇◇

第18条 日記等の情報の使用許諾等
 1
   本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
 2
   ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

◇◇ここまで一部引用◇◇


 「無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾」や「ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しない」なんて書かれてるのだけ読むとユーザの著作権物をmixiが勝手に扱う為の自分勝手な規約に思えてしまうんだけどそうではなくて。
 多分、日記などのデータを複数のサーバに保存したり、「新着日記一覧」や「新着日記検索」などのコンテンツでユーザの日記の一部を掲載して一覧を作成する為に、それらの行為が著作権侵害にならないように、ユーザの著作権をmixiが一部使用することを許諾させようとしてるのでしょう。
 もし、全ユーザに同一性保持権を主張されたら、日記の一部を抜粋して掲載した新着日記一覧なんて公開出来ません。

 似たような規約はブログサービス提供元の規約でよく見掛けます。


「gooブログサービス」利用規約
第10条(ブログ情報の著作権)
http://blog.goo.ne.jp/info/rules.html

◇◇ここから一部引用◇◇

 1.ブログ情報のうち、記事及びコメントにかかる著作権は、当該記事又はコメントを投稿した会員に帰属するものとします。但し、会員は、gooブログサイト及び当社が単独で若しくは第三者と共同で運営するその他のWEBサイトの運営の目的に限り、対価の請求をすることなく、以下に定める権利を当社に対して許諾することを予め承諾します。なお、当該権利許諾は、会員が会員資格を喪失した後においても、有効に存続するものとします。
 (1)会員が投稿した記事及びコメントの全部又は一部を複製する権利、公衆送信する権利、編集する権利、改変する権利及び翻案・翻訳する権利
 (2)会員が投稿した記事及びコメントの全部又は一部が表示される画面において、当社が選定する任意のコンテンツ(第三者が投稿した記事又はコメントを含みますがこれらに限られません)を表示する権利
 (3)会員が投稿した記事及びコメントの全部又は一部が表示される画面において、当社又は第三者の有料又は無料の広告を掲載する権利。なお、当社は、当該広告について、会員ページ上における表示/非表示を会員が選択できる機能を提供する場合があります。
 (4)前各号に定める権利を当社の委託業者及び共同事業運営者に再許諾する権利

 2.会員は、当社に対して、自己が投稿した記事及びコメントに関する著作者人格権を一切行使してはならないものとします。

 3.会員は、自己が投稿した記事若しくはコメントに関する著作権を第三者に譲渡する場合、当該第三者をして本条に定める内容を承諾させるものとします。

 4.ブログ情報のうち、記事及びコメント以外の情報にかかる著作権は、原始的に当社に帰属するものとし、本条第1項第3号に基づき掲載される広告にかかる著作権は、次条第1項に定義する広告事業者、当該広告の作成者又は当社に帰属するものとします。

◇◇ここまで一部引用◇◇


 gooブログの規約はmixiの新規約と似ています。
 新着エントリーを最新更新記事一覧に載せる為には記事の一部を抜粋して複製する必要があるから、「会員が投稿した記事及びコメントの全部又は一部を複製する権利、公衆送信する権利、編集する権利、改変する権利及び翻案・翻訳する権利」をgooブログに許して「当社に対して、自己が投稿した記事及びコメントに関する著作者人格権を一切行使してはならない」とするのは理解出来ます。
 しかし、新着エントリー一覧を形成する為などに著作権の一部使用をgooブログに許すならば、その目的をgooブログの宣伝やサービスの提供の為に限るべきなのにそうしていません。
 更に「当該権利許諾は、会員が会員資格を喪失した後においても、有効に存続」とあり、たとえgooブログを削除してもgoo側が会員の著作権物を利用することが出来てしまいます。

 livedoor Blogの規約は、目的の部分が明示されていてまだ納得出来ます。


livedoor Blog 利用規約
http://blog.livedoor.com/rule.html

◇◇ここから一部引用◇◇

 第8条 (ブログの公開について)
 利用者が著作したブログとそれに付随するコメント及びトラックバックは当該ブログを著作した利用者に著作権が発生するものとします。但し、宣伝、利用促進、出版、マーケティング等を目的としブログサービスの著作物を使用する場合、利用者は弊社に対し、当該著作物を著作権法の規定に基づき無償利用することを期間無制限で非独占的に許諾し、かつ弊社及び弊社の指定する者に対し著作者人格権を行使しないものとします。

◇◇ここまで一部引用◇◇


 livedoor Blogの規約では、ブログの著作者に著作権を認めた上で「宣伝、利用促進、出版、マーケティング等」と目的を明示して「利用者は弊社に対し、当該著作物を著作権法の規定に基づき無償利用することを期間無制限で非独占的に許諾し、かつ弊社及び弊社の指定する者に対し著作者人格権を行使しないものとします」と定めています。
 これでもまだ、目的の「出版」の部分が引っ掛かりますが、それでもgooブログの規約よりは目的を明示している分、利用者の著作物利用に対する制限が少なくなっています。

 ところで元々のmixiの新規約についてなんですが、本日3月4日付でmixiから「第18条 日記等の情報の使用許諾等」について補足説明がされてました。


[mixi] 新機能リリース・障害のご報告
利用規約改定に関するお知らせ 2008.03.04
http://mixi.jp/release_info.pl

◇◇ここから一部引用◇◇

上記の条項につきましては、ユーザーのみなさまが『mixi』のサービス内で作成した日記、著作物等の情報について、従来どおりユーザー自身が権利を有することに変わりはありません。

また、ユーザーが投稿した日記等の情報(公開している自主作成の映像やイラスト、テキスト等)の使用に関しては、当社の以下対応について同意いただくもので、当社が無断で使用することではありません。

  1. 投稿された日記等の情報が、当社のサーバーに格納する際、データ形式や容量が改変されること。
  2. アクセス数が多い日記等の情報については、データを複製して複数のサーバーに格納すること。
  3. 日記等の情報が他のユーザーによって閲覧される場合、当社のサーバーから国内外に存在するmixiユーザー(閲覧者)に向けて送信されること。

◇◇ここまで一部引用◇◇


 ユーザの権利を認めて、著作権が原則ユーザに帰属すると明言しておかないと要らぬ誤解を招くんですね。

 実はエクラサイバーシティのような旧GaiaXコミュニティでも、会員の著作権物の著作権をコミュニティ運営元に持たせてました。


(GaiaX運営下)旧エクラサイバーシティ規約
[パートナー 規約]
●プライバシーについて
http://www.eclat.cc/center/regi2.html

◇◇ここから一部引用◇◇

 ・ メンバーは個人ホームページ等の本コミュニティーサービス上のコンテンツを、運営事務局が加工および利用できることを認め、同意します。

 ・ 運営事務局は本コミュニティーの宣伝または他の商業目的でメンバーに事前の通知なくして本コミュニティーのコンテンツ並びに画像を使用することができます。本コミュニティーのコンテンツ並びに画像は新聞、雑誌などへ掲載もしくは出版物として発行されることがあります。

 ・ 本コミュニティーサービスにおける、文書・画像・音声その他一切の著作物の著作権は、運営事務局に帰属するものとします。

◇◇ここまで一部引用◇◇


 かつてGaiaX系の日本語圏コミュニティ全てで登録時にほぼ上記と同様の規約文を見掛けました。
 この規約内の「運営事務局」とはGaiaXを示しており、恐らくGaiaXは新着日記一覧の公開やデータの保存、宣伝・広報活動の為にこの規約を設けたのでしょう。
 けれど、「一切の著作物の著作権は、運営事務局に帰属」としたのはやり過ぎでした。
 mixiもgooブログもlivedoor Blogも、前提として会員(またはユーザー)の著作物の著作権は会員に帰属するものだとしていました。
 GaiaXが会員の著作権物の著作権を全て運営側に帰属させたのはやり方が拙かった。
 せめて、「データの保存・複製やサービスの提供・宣伝・広報活動を目的とする場合に限り」と目的を明示してから「運営事務局は会員が本コミュニティーサービス上に掲載した文書・画像・音声その他一切の著作物を無償かつ非独占的に利用出来るものとする。」とでもしていれば良かったのに。

 GaiaXから離れた新エクラサイバーシティコミュニティの規約は、まだ明文化されておりません。
 「新着日記」一覧のようなコンテンツを合法的に公開する為には、規約に著作権に関して住民との取り決めを明記しない訳にはいきませんので、そのうち規約は制定されるんでしょう。
 かつてのGaiaXと同じ徹を踏まないように願っています。

 てか、上記の内容には関係ないんですが。
 <blockquote>か何かで、引用と本文を明確に分けられるように、エクラサイバーシティの「日記 / コラム」の仕様が変わってくれるとほんと助かります。

追記(2008年4月27日):
 「日記 / コラム」の仕様変更に伴い、<blockquote>を付与しました。

編集 佳馨 : 僕も引用の範囲だと思いますが、その検索エンジンの検索結果の表示が著作権法32条1項の引用にあたるかどうかは現行法では明確ではありません。新着日記のように著作物の一部を集めて掲載したコンテンツに対しては、引用にあたるとする解釈と引用の範囲を超えるとする解釈の両方がまだ存在します。mixiの規約改定は囲い込みが本来の目的なんでしょうけれども、法的リスクは避けた方が望ましいです。
編集 山田 : 引用の範疇でしょう。検索エンジンと同じ理屈で新着日記に違法性は無いです。電車男やケータイ小説の結果各社がコンテンツ囲い込み考え出しただけです。