梅干之種
 「梅は食うとも核食うな中に天神寝てござる」という諺があります。
 生梅の種には毒があるから食べてはいけないという教訓の諺です。
 「天神寝てござる」の「天神」は勿論菅原道真公のこと。梅を愛でた文人として有名です。
 
 小さい頃梅干しの種を割って中身を食べると、周囲の大人にこの諺を言われて叱られました。生じゃなくても食べて身体にいいものではないのだと。
 実際に梅の実の核にはアミグダリンという青酸配糖体が含まれていて大量に食べると中毒を起こします。
 でも、しっかり漬け込んである梅干しの胚って美味しいんですよねぇ。こっそり食べては叱られてました。
 
 祖母が亡くなり、母が更に多忙になり、僕の実家では梅干しを大量に漬けて僕に分けてくれる人が居なくなりました。
 スーパーで売られている梅干しは、僕が慣れ親しんだ祖母お手製の梅干しとは味が全く違っていて、甘くて酸味が強くて口に合いません。
 好みの問題だとは思うけど、僕は甘味や酸味が塩味より勝っている味の梅干しを不味く感じてしまうのです。
 僕の知ってる味に近い梅干しを買って食べたいのだけれど、今の処僕にとって完璧な味の梅干しには巡り合えておりません。
 
 鰹節を入れている低塩の梅干しや、大きな紀州梅を使用した甘酸っぱい梅干しはよくスーパーで見かけるのだけど、田舎のおばあちゃんが作るような塩味の強い梅干しってなかなか見かけません。
 需要がないんでしょうねぇ。