愚人節話
 今日が愚人節だという事を忘れてました。
 昼から手伝ってたビラ配りの現場で今日が四月一日だと教えていただいたけど特に大した嘘は吐けませんでした。

 ところで、ビラ配りの為に現場で砂糖に集る蟻の如く密集した人込みをかき分けていた時、何処かで会った事のある顔の男性が僕の顔を見て実に分かり易く表情を変えていました。
 多分あれは僕の知り合いなんだろうなぁ、誰なんだろうなぁ、とビラ配ってる間考えていたのですが…彼は僕が以前ナイフを突きつけてしまった人でした。

 ナイフを突きつけたのには色々と事情がありまして。
 …いや、本当は色々なんてなくて単に「僕の諒解なしに」勝手に胸揉まれて押し倒されて連れ去られかけたから防衛しただけだったような気もしますが。まぁ、気の所為ですよ。きっと。

 あの時は相手に悪い事をしました。「頚動脈って何処でしたっけ?」なんて聴き乍らほんとにナイフを首に当てちゃったからなぁ。
 あの時は特に自分が悪いとは思わなかったけどよく考えたらナイフはやり過ぎ。あのナイフは全然切れないペーパーナイフだったけど、首に当てられたらそら怖いわな。
 あの時、相手が落ち着くのを待ってから僕は謝りましたが…やり過ぎました。

 ビラ配りの合間に何度かその人が奥様とお嬢様の荷物を持って会場を移動するのを見ました。
 僕は随分前に彼との縁を切ったので近況を知りませんでしたが、一家離散には到ってなかったようで何よりです。

 うん。
 今日はエイプリルフールでしたよね。

編集 佳馨 : すんませんなぁ。嘘考えるの面倒で実際にあった事を三つくらいごちゃ混ぜにしたら少し怖くなりました。
編集 e.t. : エイプリルフールにしても、ちょっと怖いです・・・