日中共存を追い続けた5000人のエリートたち 西所正道著『上海東亜同文書院』
 日中共存を追い続けた5000人のエリートたち 西所正道著『上海東亜同文書院』
 1901年かに、「『日中共存共栄』を教育理念」に、かつ「中国ビジネスのエキスパートを養成する学校」として、上海東亜同文書院は開設されたのだと、ある.
 戦前、一高・海軍兵学校、陸軍士官学校、東京商科大学とならぶ「(旧制)中学生憧れの五大校」とされる.



 「プロローグ」「第一章」で設置趣旨、教育理念、輩出の人材を述べる.第二章以下、12章に卒業生像を個別に紹介.その紹介を通じて同文書院の教育内容、時代の要請、卒業後の日中間をむすぶ貢献と実績が概観される.

 「学校でやるべきだと教えられた『理想』と、戦場で自分がやらなければならない『現実』とのギャップ」で、「大いなる屈折を味わったはず」(10p).
 「中国という相手の懐に入る」(15p)
 「(日本人が中国人を蔑視するは)日清戦争に勝ったのがきっかけ」(16p)
 「中国自体を知ることが先決」「(日清戦争勝利の)媚薬は正常な方向感覚を失わせてしまう」(20p).

 1972年、この年は日中国交回復の画期となる.
 ここに至る土を耕し、タネを播き、水をそそぎ、草・虫=あつれきを排したは、戦前に中国を肌で学んだ<層>の<平衡感覚>ではなかった、か.
 今日、日中に<溝>が指摘されるとすると、<エリート>のなかに芽生えている<垂直感覚>.

 本書は近くにお住まいの先輩から、「読んでみて」と頂戴.
 上手に表現いたしかねるも、<関係>を<つながり>ではな<比較>で捉えることが、<溝>を<壁>にしてるのかと、読みすすみつつ思い巡らしたのであるが.(角川書店 2001年).