卑弥呼は天皇家とは無縁 村井康彦著『出雲と大和 古代国家の原像をたずねてー
 卑弥呼は天皇家とは無縁 村井康彦著『出雲と大和 古代国家の原像をたずねてー』.
 本書を理解するためには、「あとがき」から読みはじめると、よい.本書の意図が提示されている.



 1)大和の三輪山は山体自体が、出雲系の大国主神でること.
 2)8世紀はじめの国造が「賀詞」を通じて、<貢置>を申し出ている.
 それは大和朝廷が成立する以前から、出雲系の神が大和に存在して(大和の)<守り神>となっていた.
 3)卑弥呼は大和朝廷とは無縁の存在であり、大王=皇統譜の系譜に載せられるべき人物ではなかった.

 文献史学者は悩む.記紀に語られる「神話伝承の世界とは何であろうぁ」、と(「はじめに」 Xp).
 そのうえで、「古今東西これを=神話をもたない民族も地域もない.だとすれば神話伝承をさけて通る古代史というものはありえないだろう」と、考える.

 記紀を緻密に読み解く.そこで見えてきたこと.
 大和のさきに、出雲、吉備、丹後の神々の国がさきにあり、そこに神武東征後、大和の覇権が後世に記録されたと、読む.

 神話を、「枝葉末節が剥ぎおとされて、根幹部分が残ったものとみることができる」と、読み解いた.
 「作業仮説」.そうした論があるかも知れない.ただ、文献史学者で著明な著者が、ライフワークの国分寺調査で積み上げた聞き取りに、考古学上の知見、神話の新しい機能を確認したうえでの立論には、尊重すべき点も豊富に、書き込まれている.