辻惟雄著「絵にしか描けない美しさ 伊藤若冲」
 辻惟雄著「絵にしか描けない美しさ 伊藤若冲」 伊藤若冲.

 東京国立博物館の展示会で突然、出会った.
 本書によれば辻氏は、1969年に評価し、京都の画家の存在を世に広めたのであると、言う.

 2001年、京都国立博物館で「若冲展」が開かれたとき、はじめ観客も少なく、しかし口コミで徐々に広がり、「若冲ブーム」の火付け役になったと、ある(91p).

 若冲の絵の魅力、その「美しさ」は「装飾性」にあると、される(94p).
 「装飾性」を形成する二つの要素が、示される.一つに「東寺の中国から輸入される花鳥画が装飾的」.
 さらなる二つ目は、「西陣織の絢爛たる装飾性」.
 「不思議な幻想性を持つデザインを生みだした」とする.

 若冲は、屏風に約1センチ間隔で、8万6000世のマス目をつくり、西陣織りの下絵の描き方にヒントを得て、立体感を出す.
(マス目に色を塗り、さらにその中にもうひとつ色を重ねるようにして立体感をだす).

 そこから、「新興町民層の美意識によって絵画の伝統に革命をもたらした」と指摘.「好奇心とユーモアに裏打ちされた個性によって、奇想の美、ギョッとする絵画の世界に高い芸術性を与えた」と、する.(辻惟雄著『ギョッとする江戸の絵画』 日本放送出版協会 2006年10月)