竹内誠著『江戸と大坂』
 竹内誠著『江戸と大坂』 元禄から田沼期のほぼ一世紀.
 構成は「タテ軸とヨコ軸の二つを考える」(8p)とする.タテ軸は時系列にして、ヨコ軸は地域間の関係.

 「江戸城大奥」
 「元禄忠臣蔵」「元禄の文化」などなど、時代の推移を時々の題材を提示しながら、説明していく.
 しかも、それぞれに史学研究者の研究成果を柱に叙述しようとする姿勢が特徴点.
 「大奥」なら、朝廷に勤仕する公家の当主たる松尾相匡(すけまさ)の日記をもとに(16p)、右衛門督(うえもんのすけ)付きの梅津と称する女性の生涯をつうじて、秘門を開いてみせる.
 「忠臣蔵」なら赤穂市史総務部市史編さん室編の『忠臣蔵』第三巻(26p)に依拠するなど、丁寧でもある.

 ヨコ軸.
 ヨコ軸で、<上方>について位置づけする点がある.「近世社会は、都市が経済循環の結節点として不可欠な存在」(13p)と規定し、<上方>に「地理的意味だけでなく、そこに展開された独自の文化相を包含する」とする(12p).

 なかなか、おもしろい.
 読ませてくれる.そもそも史学者の著わす啓発書ながら、時代を「大奥」「忠臣蔵」から切り取って行こうとする点が、「読ませる」ことになるのかも.(大系 日本の歴史10 小学館 1988年).