内藤 誠著『昭和映画史ノート―娯楽映画と戦争の影ー』
 日本映画の昭和史を、対米開戦期から敗戦期までに設置されていた「日本映画学校」を境界に、戦前の「ハヤフサヒデト伝説」と水の江滝子論で綴ろうとしている。

 日本映画学校。おもうに従軍撮影と善戦日本軍を国民に見せる戦時昂揚の映画技術者養成にその任があったであろうことは、想像に難くない。
 しかし、そのカリキュラムを紹介されてみると、興味深い点がある。「国文学・万葉集」「日本倫理と日本文化」「芸術概論」などの科目が揃えられ、「軍部の国家めいたものを除けば、いたれりつくせり」とする。 (平凡社新書)

 「ハヤフサヒデ」については、寡聞にして知らなかったが水の江滝子はNHK番組「ジェスチャー」に登場していて、記憶がある。
 彼女にして映画プロデュサーの業績があり、石原裕次郎を発掘し、「短編小説」にこそ映画つくりの妙味があるという。

 大衆娯楽の華とされた映画に、hon本書をもってするまで「歴史的・理論的なアプローチ」(8p)をめざすと、する。 (平凡社新書 2001年)