松岡正剛著『おもかげの国うつろいの国―日本の「編集文化」を考える』
 松岡正剛著『おもかげの国うつろいの国―日本の「編集文化」を考える』。「こんとん」「あいまい」を「多様にして一途」と読み、「おもかげ」と「うつろい」をキーワードに、日本文化の特徴を読みとろうとする。
 そこで「一途」を読みとろうとする手法を「編集文化」と名付けているようでもある。

 神祇と仏教。無常観の発生。ウツロとウツロイ。ハカとハカナイ。
 時代とともに概念が成立してくる一方で、本居宣長の「『わざ』にふれて、『こころ』が感ずる」という「図抜けた特色」(130p)を読み解く。

 時の政権が、権力成立の背景を外国に根拠を求めてきた点を、明示しているのが興味深い。
 古代から中国に成立の根拠をもとめ、家康政権の成立時にまさかの、明王朝の崩壊に遭遇するとする。
 鎖国という特異な体制を維持しながら、「外国」という特別扱い、「畏敬と恐怖、好奇と劣等、同化と排外の目が、つねにまじってきた」(138p)ように思う、とする。

 海に面した国ながら、「海を意識しなかった不思議」(140p)とも述べる。
 外国対策に苦労するのが、今にはじまったことではないと、言うこと。
 
 政権はかつて「中夷思想」で中国に、戦後はUSAに一体化。その枠組みを抜け出ることができない。
 国際的には、200海里漁業規制、ウルグアイランド体制による輸入米受け入れ義務、今次のTPP。
 海外との関係において、しばしば正確な情報が国民化されず、対応も後手にまわっているように見える。

 哲学者、思想家の著作を丹念に読みこなし、「一途」を展望しようとする構想と裏付けは、評価されるべきであろう。(日本放送出版協会 2004年)