奥山宏著『証券スキャンダル』
 奥山宏著『証券スキャンダル』。1991年6月20日の『読売新聞』は、報じたのだという。
 「野村証券が大口顧客に160億円の損失補てんをしていた」(26p)。

 奥村は指摘する。他の三大証券、大手、準大手、中小証券と損失補てんの事実はひろまり、総額は1,720億円になった、とする(同)。

 証券業は、直接金融と区分されることを最近になって知った。
 「ブラック・マンデー」を機に株安がつづいたが、特定の法人や大口個人取引に限って、「補てん」がおこなわれたのだという。

 補てん対象に政治家の名がないこと(35p)、暴力組織の㈱買い占めにも証券会社が加担していること(38p)。

 そもそも四大証券が形成されてきたことを含めて、可能にした土壌(閉鎖性、大量取引・ノルマ制・法人優遇の営業姿勢、ブローカーとディラーを兼業しているなどの制度設計)。

 市民のなかには株取引のリスクについて不安要素があって、知ろうとしないというか近づこうとしない。
 そうした日本的感情のなかで、知られてないことが公然とすすむ、その処理のために税金が投入されていることも、また事実。

 古い本ながら、「あの日、あの時」の理解には、役立ちそう。(岩波書店 1991年10月)