四方田犬彦著『大好きな韓国』
 四方田犬彦著『大好きな韓国』。著者が1979年、2000年の両度、韓国に滞在しながら生活と教育の経験をもとに、韓国人と都市のありようを記す。
 1979年は朴正熙が暗殺され軍事政権のもとにあり、2000年には世代交代、都市基盤の整備、日本文化の解禁がすすんで大衆消費社会に移行する。

 韓国は隣の国でありながら、中国文化を日本に伝えた役割を承知しながらも近代の韓国について、日本人は大韓民国を具体的に理解していないように思う。
 日本人の朝鮮半島観には、「行き当たりばったりの国民性」をいうむきもあるが、著者は手じかにある食材を臨機応変にいかす食文化を紹介する。

 稀な単一民族の国。日韓併合の歴史が近代化を遅らせたと理解される一方で、北朝鮮の脅威にはさまれながら男性は徴兵義務を体験する。
 日本に大陸文化を伝えたという優越性を意識しながらも、日本に対する警戒感・不信感は根強いとされる。
 
 朴正熙・全斗煥までの軍事政権、普通の政権を標榜した慮泰愚と太陽政策をすすめる金大中政権。
 太陽政策・男性中心主義・世界進出。経済の面でも、文化的にも、すばやくスケールの大きい成長を積み上げて、大衆消費社会を具体化した。そのうえで、日本文化を排除ではなく成長の足がかりにする韓国社会が紹介されている。

 NHKETV。「人間講座」のテキスト。ちなみに、「朝鮮」は15世紀から20世紀までつづいた王朝名で「伝統的で肯定的な価値観をもつ場合」にもちい、「韓国」は日常、一般的にもちいられるという(30p)。(日本放送出版協会 2002年 560円+税)