増田淑美著「農村女性の結婚」
 農村女性に三つの階層があるとする。上層農家の女性は武家に奉公にでて、庄屋など村支配の立場の家柄に沿うものかどうか。釣りあいと人柄が問題となる。
 下層農民の女性は、上層農家に奉公して農業労働力に耐えるかどうか、働き者かどうかが試される。零細農家の娘は、「飯盛女」に出される。階層差は明瞭である。

 それでも女性の結婚には、「婚姻は生家から婚家へ引移り、その身分が変化する時」と位置づけられる(167p)。

 仲人が立てられ、野合か正式な婚姻であるのか、示される。19世紀に入ると貧農の江戸流入で「農村では農家奉公が減少した」という(189p)。下層農女性は「結婚を自主的に決定できるようになった」とする(同)。
 
 明治民法で国家と家に縛れた女性は結婚をめぐって、戦後の今も「女性自身も、その両親も親戚も『世間』というものをどこかで引きずっている」と指摘。
 
 格差社会ということをいう。江戸時時代は多くの格差を背負っている。他面で19世紀は女性も江戸流入で、農村は労働力不足。江戸時代をして「日本型生活様式の発生」とする見解がある。
 でわ、昨今の「媒酌人不在」は、婚姻の「家結合」から「本人結合」への移転ということになるのであろうか。(林玲子編『女性の近世』 中央公論社『日本の近世15』 1998年)