柿の花
梅雨に入っても7日の深夜未明、そして7日の夕方少し雨がふり、
3日に帰郷した翌日から晴れて汗ばむくらい。

主人経営の中古アパートも海の傍で長年住んでくれた方が引っ越し、
夜逃げした人の部屋も主人が毎日電化製品やごみ等を運んでいる。

その人達の事を何一つ文句も言わず
こつこつ運び片づけている主人に労いの言葉をかけ、

洗濯機が回っている間少し手伝ったり、
午前中、近所の親友にお土産を持って行った。

「海の近くの家は地震時に津波がくるから売れないの。」
親友に聞いて増々大震災の恐さを痛感する。

そういえば海辺には津波タワーが二か所作られて
今迄とは違う何かが脳裏を通りすぎていく。

東北の大地震で被害にあった人達は本当に気の毒に思っても、
その人達に会ったところで私には何も言えない。

あの経験をしていない私がどんなに労いの言葉をかけても
被害者の人達に募金をしようが心のなかに入る事は出来ない。

あっと言う間に6月も9日になり
長年アパートに住んでくれたご主人様が我が家にやってきた。

笑顔で挨拶を交わし「鍵を渡す為に何度か来ましたよ。」そして
その方の奥様が癌の末期で寝たきりになった話を聞きショックを受けた。

その奥様とはバスツアーに行った事のある元気な人だったのに。
お付き合いはそれだけだったが年に数回電話連絡だけしていた。

引っ越し先を聞いたので暇ができたらお見舞いに行き、
私にできる事をしてあげたい。

暦では5日頃、二十四節気の芒種に入り芒(のぎ)のある穀物、
稲や麦等に穂がでる穀物の種をまく季節という事から芒種と言われる。

若葉も濃緑に変わり梅の実も青から黄色に変わる頃。
もう少し経てば清流の畔に蛍が飛び交う。

なんて素敵な光景なのか、我が家も白い柿の花が咲き始め、
緑の風が私の頬を優しく撫でてくれた。