故郷の香り


今頃、我が故郷はもう山茶花が咲き始めただろうか。
そろそろ金柑の実がたわわに実り始めたかしら。

金柑は後から後から実をつけてぽろぽろ庭に落ちる度、
暗い雨空を明るくさせる果実。近頃は糖度も増してきた。

柚子もいい香りを漂わせ重たそうに頭を垂れて実ったかしら。
淡い柑橘系の香りはコロンや香水にもよく合う。

初冬の沖縄は雨ふりの日が続き、洗濯物が中々乾かない。
乾燥機も付いていない古い全自動洗濯機で音も割とうるさい。

何度も空を飛んでいるヘリコプターの方が静かに聞こえる。
10月、11月オスプレーも飛んだらしいが全く気付かなかった。

自由奔放な主人は、昼食の為に住まいに戻る位で
日中は毎日外で行動している。

ゲートボールの審判をしたり、自分も試合に参加して優勝でお米を頂く。
今日も雨がふっているのに午後からグランドゴルフらしい。

前回、沖縄に来た時と同じ合鍵を持っているという事は
彼女と会っていると思う。その人が誰か想像もつかない。

そんな主人が帰宅しても普通に会話をしながら笑顔を絶やした事はない。
「誰と会っていたの?」等と口に出しても楽しい筈はないから。

しわも増えてやせ細り、住まいに帰れば疲れて寝てばかりの彼が
遊べるのは今のうちだけ。

彼にとって退職後の人生は満足だったと思って貰いたい。
私は、未亡人の事を考えれば幸せだと思う。