5月7日 浜風 
太平洋沿岸を台風が通過している為、雨降り止まず風が強い。
朝の静かな時、船の汽笛の音が風に乗って聞えていた。

三日間、雨が続いていたので池の金魚達が亡くなっていた姿を見て
ショックを受けた。主人が飼っていたお魚達を彼は大切にしていた。

もう殆どが池の中に設置してあるトンネルのような中で
息絶えていると思いよく見れば、数匹は生存していたのでほっとする。

「俺は消える!」数日前に彼が言った言葉を思い出し、
様々な事を考えても、直ぐに帰って来る事は判っている。

「外の人と一緒になりたいならば、私は直ぐに出て行きます。」
こんな会話は何度か交わしていた。

大きな金銭を使い果たす彼と、ちりも積もれば山となる主義の
私、将来の生活に困らないのは、高収入の彼とは限らない。

「アパートのインターホンが壊れたのでどうしますか?」
不動産屋から電話がきても、彼が居れば簡単に直す事ができても

私には直せない為、「業者の方に頼んで下さい」とお返事をした。
夕方になれば雨は止み、富士の裾の部分だけ真っ青に、

山々も真っ青に見えた。しかし雨雲は空を覆っている。
浜風は冷たく吹き荒れ、四月上旬の花冷えの頃を思い出した。