小鮒釣りしかの川
二日間を費やして台所のクロスカーペットを新しい物に取替え終わる。
私は、冷蔵庫を動かす時、食器棚を動かす時だけ

手伝いをし、普通に家事をしていた。
日中は、晴れていたが、夕方から小雨が振り出し

梅雨は明けると思っていたほど気温の高い日が三日も続いた。
七月の晴れの日は、時間がことさら早く過ぎていく。

主人が金魚を買い、川で鮒を釣り、コンテナに入れて喜んでいる。
そういえば、私も、幼い頃、父が池に鯉や金魚を飼い、

喜んでいた顔を思い出しながら、あれは、私の為に飼ってくれたと
後になって気付いた。

年老いた父が精一杯、私を大切に育ててくれたお陰で大人になった
私は、父が困った時、一度、質屋の門をくぐった事がある。

住所、氏名、身分証明書、指紋を押した様な気がする。はっとして
こんな事をしても何もならない事に気付いたが、腕時計が消えていた。

嫌悪感に駆られながら、自宅に戻り、愚かな自分を反省した。
この事を主人に話すと、「腕時計を流しちゃったのか?」と聞かれ

「うん、取り戻す金銭が無くて、そのままにしたの!」正直に答えた。
どんな思い出でも、故郷は懐かしい。主人が釣ってきた鮒を見て

♪ウサギ追いしかの山、小鮒釣りしかの川、夢は今もめぐりて。。。
鼻歌を唄いながら、鮒を見つめていた。