桜、若葉、そして梅雨
手土産なしでお友達のお宅へ、電話も掛けずに顔を見に行った。
サイダーを飲みながら、賑やかにげらげら笑って我が家に戻る途中、

もう田植えも終わったんだわ!何処を見たって緑ばかり。
振り返れば、桜が満開に艶やかに咲いていた四月。

黄緑色の若葉が芽吹き、緑の風が清々しい皐月晴れの五月。
そして田植えが終わった稲田、梅雨に入った六月。

お友達と笑ったのは、水浸しになった心を励ましたかった。
私は昨夜、主人に一言ぐさっと言われた言葉が耳から離れない。

何処で遊んでも構わないが、ひとりの女性として軽蔑される言葉は
許す事は出来ない。あれが本音ならば何て悲しい夫婦かと思ったが、

私は、彼に何の代償も求めないと心に誓ったはずだった。何て
些細な事に拘ったのか、愚かな人間かと考え直した。これから

夕食の支度もしなければならないのに、本当に私って馬鹿だと思う。
六月は、雨が降っても真夏の酷暑よりも、ずっと過しやすいはず。

蒸し暑かった昨日、今日だったが、今夜は、暗い空を涼しい風が
すうすう吹いて、小鳥が慌てゝ空中をさ迷いながら飛んでいる。