格物致知
 「大学生は勉強をしない」ということを前提にした話を見聞きする度に僕は酷い違和感を覚えます。

 僕の知る現役大学生の殆どは研究と学習に一日の大半を費やしています。
 大学のサークルの文系の後輩たちは、毎日10時間以上大学構内で講義と実習を受けて合間の時間に図書館で資料集めしてる子達ばかりでした。
 大学時代に親しくなった人も大学に在籍しているうちに取れるだけの講義と資格を取ろうとする人ばかりでした。

 「大学入ってから毎日遊べて楽しい」とことあるごとに周囲に言う人たちも居ましたが、その「遊び」の内容は研究室での実験であったり、資格取得の為の学習であったりしました。
 その人たちにとっては楽しくてたまらない遊びのようなものだったようです。

 僕にとって一日のうちで机に向かう時間が最も多くを占めたのが大学生と大学院生の期間でした。
 僕の場合はアルバイトも翻刻のように机に向かうものばかりでしたので、平日は一日24時間のうち16時間近く机に向かっていました。
 勿論机に向かうことだけが勉強だというわけでもありませんが、これからの人生で学生時代以上に特定の分野の知識を溜め込んでその知識を使って研究することはないような気がします。

 ところで、ある教授がこんなことを仰ってました。
 「大学は勉強するところではなく自ら学ぶところである」と。

 そういえば、学生時代によく遊んだ人が「学生のころはよく遊んだ」と言うのを見たことがあっても、周囲よりも真面目に学習と研究に励んでいた人が態々それを人に言うのを見たことがありません。
 学習も研究も何もせずにバイトに明け暮れていた人も、研究三昧の日々を過ごした人も、学生時代について触れる時は「あのころはよく遊んでた」と仰います。

 もしかして、「大学生は勉強をしない」と言う人は学生時代に学ぶものが少なかった自分の体験から皆がそうであると思いこんでいやしないだろうか。
 まさかなぁ。